VOICES
演奏家
ストラディヴァリウス「パガニーニ・クァルテット」
ストラディヴァリウス1731年製ヴィオラ「パガニーニ」 磯村和英に聞く
パガニーニ・クァルテットは、四つの楽器それぞれにもちろん個性はありますが、同じストラディヴァリ作品の特徴を備えていて、どうやって音を調和させたらいいかということに余分な神経を使わなくて済むのがよいですね。このヴィオラの音色は、緻密、華麗で、浸透力がある。つまり音がとてもよく通るのです。澄み切った音も、レスポンシヴ(鋭敏)なところも特徴ですね。良い楽器は弾き手を選ぶ傾向もありますが、こちらの要求に永遠に応えてくれるかのような魅力があります。例えばあまり良くないヴィオラに対し、“渋くて深みがある”という言い方がされることも多いですが、実はただ、もやもやしているだけのこともあります。それが全くないですね。楽器のコンディションが非常に良かったのです。オリジナルのニスも厚く、素晴らしい状態。演奏家がいうことでもないかもしれませんが、美術品としても、とても優れていると思います。弓も大事になってきます。それで楽器の無限の可能性を引き出すために、今、正反対の性格の弓を二本使い分けています。
パガニーニやベルリオーズゆかりの楽器、つまり人類の遺産を預かっていると思うと、日常生活でも気を遣います。旅の時などね。でもこうした楽器が陳列されるのではなく、音楽家に長く貸し出されているのは素晴らしいことですね。
(弦楽器雑誌「サラサーテ」インタビュー 2006年2月号より抜粋)
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