VOICES
演奏家
ストラディヴァリウス「パガニーニ・クァルテット」
19世紀に超絶技巧とカリスマ的な音楽性で一世を風靡した、ヴァイオリニストで作曲家でもあったパガニーニは、クヮルテットを弾くためにストラディヴァリウスを四つ手に入れました。その貴重なセット(パガニーニ・クヮルテット)で17年余りに渡り、数え切れない程のコンサートを弾かせて頂き、日本音楽財団には感謝の気持ちで一杯です。
クヮルテット全員がストラディヴァリウスで演奏するというのは、大変充実した素晴らしい体験でした。フォルテは音が抜けるように浸透するので、競い合うようにがなり立てる必要はなく、ピアノ、ピアニッシモはかなり小さく弾いても、演奏会場で音が消え入ってしまう心配がないのです。音色又は音の表情に関しては、楽器の反応が非常に鋭敏なので、繊細かつ変化に富んだ表現が出来ます。
ストラディヴァリウスは、ヴィオラをごく少数しか作らなかった上に、パガニーニが愛用したと言うことで、大変稀少価値のある素晴らしいヴィオラを私はお借りしていますが、個人的感想を率直に言いますと、それは楽器への挑戦の連続でした。敢えて例えを挙げれば、気位の高いサラブレッドを飼い馴らすと言う感じでした。相当な努力が必要でしたが、多くを学びました。
日本音楽財団には今後とも、世界の文化遺産である音楽と楽器を支援し続けて頂き、音楽を愛する皆様には、室内楽を多いに楽しんで頂きたいと願っています。
(2013年2月8日開催 日本音楽財団演奏会プログラム掲載)