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池田 菊衛

(c)神戸新聞社

演奏家

池田 菊衛

ストラディヴァリウス「パガニーニ・クァルテット」

日本音楽財団主催による東京クヮルテット最後の財団演奏会にご来場いただき、ありがとうございます。早いもので財団から「パガニーニ・クヮルテット」を貸与されて18年が経ちます。
実はこの有名なストラディヴァリウスのセットの存在は随分前から身近に知っていました。友人でありライバルでもあったクリーヴランド・クヮルテットがワシントンDCにあるコーコラン美術館から貸与されていたからです。メンデルスゾーンの八重奏曲を共演する機会があった時、当時同じ美術館から「アマティ・クヮルテット」を貸与されていた我々は彼らの使っていたセットを大変興味深く見せてもらったものでした。
それから時を経て、日本音楽財団から我々に「パガニーニ・クヮルテット」が貸与される事になりました。私の手元に “Stringed Instrument Collection in the Corcoran Gallery of Art” (1986年学習研究社発行)という本があるのですが、「パガニーニ・クヮルテット」と「アマティ・クヮルテット」の素晴らしい写真が横山進一さんの撮影で収められています。のちに東京クヮルテットがこの本に収蔵されている両方の楽器を演奏できるようになるとは、出版されたてのこの本がコーコラン美術館から送られてきた時には思ってもみませんでした。
11年間使った1672年製のアマティ、そして1680年製のストラディヴァリウス。違いはどういう所にあるのか? と聞かれると返事に困るぐらい2つの楽器は似ています。楽器にある魂が本当に似ているのです。演奏家にとって幸せなのは、名曲に出会うこと、美しい音響のホールで演奏する事、我々の演奏を楽しんで聞いて下さる聴衆に恵まれる事、そして素晴らしい楽器に出会う事です。
永い間応援して下さった聴衆の皆様、そして素晴らしい楽器を無償で貸与して下さった日本音楽財団に感謝の気持ちで一杯です。

(2013年2月8日開催 日本音楽財団演奏会プログラム掲載)

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