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アラベラ·美歩·シュタインバッハー

(c)Eisuke Miyoshi

演奏家

アラベラ·美歩·シュタインバッハー

ストラディヴァリウス1716年製ヴァイオリン「ブース」

私が初めてヴァイオリン“ブース”を弾いた時、その深みのある温かい音色に感動のあまり一瞬にして体が震えました。同時に、この楽器について学ぶことがあまりにもたくさんあることを知りました。このようなヴァイオリンの音色はいつも神秘的で、まるでヴァイオリンが生きてきた300年の物語を私たちに語りかけようとしているかのようです。しばらくこのヴァイオリンを弾いてきて言えることは、弾き始めた頃より音色は変化し、進化したということです。私は、このヴァイオリンのもつ様々な音色を発見する中で多くのことを学びました。音楽を通して自分の感情を表現する上で、いつもこの楽器から刺激を受けています。この素晴らしいヴァイオリンを弾く機会に恵まれたことを本当に有難く思います。 数年前のタングルウッド音楽祭でマエストロ フォン・ドホナーニ指揮ボストン交響楽団と初共演し、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を弾いた時のことです。舞台に向かう前、突然誰かが楽屋のドアをノックしました。それは、ボストン交響楽団の前コンサートマスター、ジョゼフ・シルヴァースタイン氏でした。彼は、「ストラディヴァリウス“ブース”に関して私たちには共通点がある。」と話し始めました。彼の師であるミッシャ・ミシャコフ氏は1950年代にこの“ブース”を所有しており、シルヴァースタイン氏がボストン交響楽団との初共演で同じくベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を演奏した時、師のストラディヴァリウス“ブース”を弾かせてもらったと言うのです。とても特別で、感動的なひと時でした。

(2015年7月9日開催 日本音楽財団演奏会プログラム掲載)

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