保有楽器一覧

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Stradivarius

ストラディヴァリウス1714年製ヴァイオリン

ドルフィン

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来歴

光沢の美しい裏板のニスと華麗な見栄えは、まるで優美なイルカが光り輝いている様を思わせることから、1860年代後半にこのヴァイオリンを所有していたロンドンの楽器商ジョージ・ハートによって「ドルフィン」と名付けられ、以来、この名で呼ばれている。1862年、有名なアマチュア奏者のC.G.マイヤー氏はこのヴァイオリンをパリの楽器商ジャン・バティスト・ヴィヨームから購入し、1868年にジョージ・ハートに売却した。1875年に著名な収集家ジョン・アダム氏に売却され、1881年から1882年に、同氏のその他のコレクションと共に、当時世界的に活躍していた楽器商デヴィッド・ローリーに託された。1882年、アマチュア奏者で収集家でもあったボルトン在住のリチャード・ベネット氏に売却された。1892年、ベネット氏からこのヴァイオリンを入手したW.E.ヒル&サンズはライオネル・ウォーカー・マンロー氏に売却し、同氏から買い戻した後、優れたアマチュア奏者であったA.N.ストザート夫人に売却した。同夫人は1915年までこの楽器を所有し続けた。1915年、W.E.ヒル&サンズはこのヴァイオリンを再び買い取り、以前の所有者であったリチャード・ベネット氏に売却した。1926年、ドルフィンを含む同氏のコレクションが手放されることになり、1935年、有名なビスケット製造会社を経営していたジョージ・ケンプ氏の手に渡った。1950年にヴァイオリンのヴィルトゥオーゾ、ヤッシャ・ハイフェッツ(1901-1987)の手に渡り、その後、ヘンリー・ホッティンガー氏のコレクションとして保管された。このヴァイオリンは1970年から香港出身で英国在住のチョー・ミン・シン氏によって大切に保管されていた。日本音楽財団は2000年2月にこの楽器を購入した。

特徴

裏板は非常に美しいカエデの二枚板で、板の継ぎ目から上に向かって傾斜した幅の大きく異なる杢目が見られる。横板は中程度の幅の杢目が見られる。スクロールにはぼんやりとした杢目が見られる。表板は厳選されたスプルースの二枚板で、中程度の幅の木目は極めて均等であるが、両端はやや幅広である。ニスは鮮やかなオレンジと赤の中間色である。ストラディヴァリの黄金時代の代表作として、W.E.ヒル&サンズ発行の書物には、1715年製「アラード」、1716年製「メシア」と並んで言及されている。

証明書

ストラディヴァリウス1714年製ヴァイオリン「ドルフィン」

1970年7月28日付 William Moenning & Son, Inc., C. M. Sin宛て
1951年5月18日付 William E. Hill & Sons, Jascha Heifetz宛て
1933年1月2日付 W. E. Hill & Sons, G. H. Kemp宛て

参考資料等

ストラディヴァリウス1714年製ヴァイオリン「ドルフィン」

2000年1月13日付 Andrew Hill, 日本音楽財団宛てレポート
1950年9月9日付 William E. Hill & Sons, Jascha Heifetz宛て来歴書簡

“Violin Iconography of Antonio Stradivari: 1644-1737” by H. K. Goodkind (P437)
“How Many Strads?” by Doring (P179)
“Antonio Stradivari His Life and Work by W. E. Hill” P60/62

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