このヴァイオリンは、イタリアの著名なコントラバス奏者ドメニコ・ドラゴネッティ(1763-1846)によって大切に所有されていたことから、この名前で呼ばれている。この楽器は、英国の楽器商ジョン・ベッツによってイタリアから英国に持ち込まれ、1818年にアマチュア奏者として知られていたF.V.リヴァス氏の手に渡った。同氏は他にも複数の名器を所有していた。1835年にF.ドゥ・ルジュモン氏の手に渡り、次に、小説家で、熱心なヴァイオリン収集家でもあったチャールズ・リードの元へ渡った。1852年にチープサイドのアルヴェイ・ターナー氏からバシャール氏の手に渡り、1910年に英国の楽器商W.E.ヒル&サンズに買い取られるまで、同家によって保管されていた。20世紀に最も有名なイタリア製弦楽器コレクションを形成したリチャード・ベネット氏の手に1912年に渡ったが、1926年にはこの楽器を含めた同氏のコレクション全てがW.E.ヒル&サンズに託されることになる。このヴァイオリンは、1958年に英国のバースで行われたアート展覧会に、W.E.ヒル&サンズのコレクションを象徴する楽器として展示された。1963年にはヴァイオリン奏者のアルフレード・カンポリ(1906-1991)の手に渡り、次いで1988年にオリヴィエ・ジャック氏の元に渡った。その後、西ドイツ銀行の所有となり、著名なヴァイオリン奏者フランク・ペーター・ツィンマーマンに貸与された。日本音楽財団は2002年6月に西ドイツ銀行からこの楽器を購入した。